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2013年8月

2013年8月31日 (土)

「かき広」の牡蠣飯

大阪、淀屋橋の南詰に「かき広」という牡蠣船が泊まっている。昔、私は何度も前を通るたびに気になり、友達に連れて行ってもらった。
  岸から船へ渡る時は、ちょっと竜宮へ入るような心地がした。座敷で水をながめながら料理を食べたが、しめくくりの牡蠣飯が今も忘れられない。

2013年8月29日 (木)

「デコー」のカレー

 以前、浅草「ひさご通り」の言問側の入口。向かって右側に「デコー」というカレー屋があった。デコーとはデコールの謂いだったのだろうか?

2013年8月28日 (水)

豚馬鍋

 内田百閒は鹿肉と馬肉でもって馬鹿鍋をこしらえたが、私はトンマ鍋ならば、したことがある。大学院時代、伝通院の「みの家」で宴会をした時、この店には桜鍋と豚鍋があったので、両方取って混ぜて食べた。
 だから、どうだということはない。

2013年8月27日 (火)

鱶(フカ)の湯引き

 鉄輪温泉に滞在して「猫城」を書いていた時、時々別府駅の方へ出かけて、居酒屋で昼酒を飲んだ。「二十八万石」という店に入ったのを憶えている。その時、「鱶の湯引き」を食べたが、身が輪切りになっていることからして、小ぶりの鱶である。猫鮫のようなものかと思ったが、ホシザメという種類らしい。酢味噌で食べたが、ほっこりしていて、良いものだった。

2013年8月26日 (月)

たぬき豆腐

 山形の新庄駅の近くに「うなぎ てんぷら すっぽん ビフテキ」と書いた看板を出している居酒屋がある。「(まとい)」という。
 ここに「たぬき豆腐」というものがあるので、頼んでみた。鍋に豆腐を入れて天かすをまぶし、葱と卵を加え、醤油味で卵とじにしている。豆腐は柔らかく、甘味があって、じつに良い。

2013年8月25日 (日)

「きょう太」のほでなす

 田中温泉に滞在した時、鳴子郵便局の隣にあった居酒屋「きょう太」へよく行った。
 この店に「ほでなす」という酒があった。といっても、そういう銘柄ではない。「きよう太」は色々な地酒を置いていたが、ある客が日本酒を何ケースも注文したきり、急死してしまった。亭主は酒を一年程冷蔵庫に保存しておいたところ、低温で熟成したのか、口あたりが良くなっている。つい飲みすぎて「ほでなす(馬鹿者)」になるというので、このように命名した。
 私も幾度かそれを飲んで、ほでなすになってフラフラと宿へ帰った。

2013年8月23日 (金)

干瓢(かんぴょう)巻き

 私は東京の人間だけれども、東京のある種の甘ったるい食品が嫌いである。稲荷鮨は普通に売っているものは食べられぬ。干瓢巻きも同様である。
 昔、中学生の頃、平野威馬雄主催の「お化けを守る会」に出たら、弁当を手渡されたが、中身がお稲荷さんと干瓢巻きだけだった。私は一つも食べられずに空腹を忍んだ。
 大人になってから、私にも食べられる干瓢巻きがあるのを知った。干瓢が甘すぎず、凛とした上等の海苔を使って、香り高い山葵をきかせたものは、食べられるだけでなく好きでさえある。

2013年8月20日 (火)

「おかぶ」の蒲焼

 昔、表参道の交差点の近くに「おかぶ」という間口の狭い鰻屋があった。古めかしい、くすんだ店内で、水槽の鰻が息を殺すようにしていた。フランスからマルクという弟が来た時(映画「マトリクス2」の特殊効果を担当した南條マルクである)、鰻というものを教えてやろうと思い、連れて行った。味はよく憶えていない。

2013年8月19日 (月)

焼きホヤ

 昔、田中温泉の夕食の膳に奇妙な物が出て来た。柿のような色形でホヤかと思ったが、パサパサしている。生でもなく干物でもない。賄い方のツンちゃんに聞くと、「それ、食べてから水を飲むと、水が甘いんだ」という。不思議な物は焼いたホヤであった。

2013年8月18日 (日)

鰊の山椒漬け

 会津名物の鰊の山椒漬けは旨味あり、酸味あり、香りがあって、酒が大いに進む。昔、東山温泉の「向滝」に泊まった時、これを肴に痛飲した。福島稲荷前の「あいづ食堂」でも、行くたびに必ず食べた。

2013年8月17日 (土)

新庄のひっぱり

 山形県新庄のあたりでは、茹でたうどんに納豆をからめて食べる。これを「ひっぱり」という。瀬見温泉の「喜至楼」で出たひっぱりは、細いうどんに納豆と鯖の缶詰をからめ、葱、鰹節、唐辛子を薬味に使う。鯖の缶詰を使うのは好きずきだとか。

2013年8月16日 (金)

「巴屋」の胡麻汁そば

 本郷の大学に通っていた頃、よく行った蕎麦屋は本郷通りにある「巴屋」だった。胡麻汁に刻んだ大葉の入っている胡麻汁蕎麦が好きだったが、思いきり辛い大根を使ったおろしそばも良かった。舌がヒリヒリするようで、おろしそばはああでなくてはいけない。
 今でも図書館に用のある時、時々この店に寄る。

2013年8月15日 (木)

別府の焼豚足

 別府、鉄輪温泉で「猫城」を書いていた時、泊まっていた「温泉閣」のおかみさんが車で行きつけの居酒屋に連れて行ってくれた。そこで初めて炙った豚足を食べたが、皮はパリパリして香ばしく、中はとろけるようである。豚足のもっとも美味い食べ方の一つだと思った。
 東京へ帰る途中、小倉の駅前の酒場でも炙り豚足を食べたが、これも仲々いけた。

2013年8月14日 (水)

「八角亭」のレーメン

 昔、というのは今から四十数年も前になるが、原宿の明治通りと表参道の交わる交差点に、「八角亭」という焼肉屋があった。私はここで初めてレーメンというものを食べた。そのレーメンは黒ずんでいて、噛み切れないほど硬く、鋏で切ったのを憶えている。ああいうのが当時の好みだったのか知らん。友人のS井君もレーメンは硬い硬いと言っていた。

2013年8月13日 (火)

微温湯温泉の茄子漬け

 微温湯温泉の湯には明礬が入っているので、これを用いて小茄子の漬け物をすると、紫色が美しい。夏、茄子の季節には朝食やおやつに出る。

2013年8月12日 (月)

「揚羽屋」のしらみ豆腐

 以前、小諸で島崎藤村ゆかりの「揚羽屋」という居酒屋に入ったら、御亭主と意気投合し、それから二、三度行った。鯉の肝や鮎のセゴシを肴にしたたか飲み、酔い倒れて駅まで送ってもらったこともあった。その時、私は夢うつつで電車に乗り、上田まで行ったのである。
 この店の名物が「しらみ豆腐」で、豆腐に白胡麻が入っている。

2013年8月11日 (日)

アボカド

 初めてアボカドというものを食べたのは、今から四十年程も前のこと、「川奈ホテル」のレストランでだった。父と韮山で療養中の祖母を見舞った帰り、ここに一泊したのである。
 その時、このホテルには田中**さんが滞在していて、私はレストランで初めて田中さんに会った。田中さんはアボカドのサラダを美味しそうに食べていた。フランス料理屋などでバターをそうするように、丸く刳りぬいたアボカドである。私も食べてみて、不思議な、こってりしたものだと思った。こんな珍しい野菜を食べる田中さんはハイカラな人だと思った。
 このレストランでは鰤のステーキを自慢にしていて、それも食べたが、まずまずだった。

2013年8月10日 (土)

「鱗旅館」のホッケの煮つけ

 ある寒い冬、急に北へ行きたくなった私は飛行機で函館へ飛んだ。湯の川温泉の「鱗旅館」に宿をとったが、魚づくしの食事が美味く、北海道の魚というものを見直した。
 中でもホッケの煮つけが気に入ったので、帰り際、おかみさんに言うと、「そうでしょう」と喜んでいた。
 火事で全焼する前のことである。

2013年8月 9日 (金)

ツメタガイ

 子供の頃、毎年夏に水浴をした館山の鏡が浦は遠浅で、よく足の裏にツメタガイがあたる。貝殻も落ちている。わたしは綺麗な貝だと思った。食べる人はいなかったが、図鑑を見ると「食用」のマークがついているので、ある時、丘の家で茹でてもらった。案外美味であることを発見した。
 近頃話題の外来種・クロツメタガイのことではない。

2013年8月 8日 (木)

「二十番」のチーイリチー

 昔、アメリカ文学界に出るため初めて那覇を訪れた時、山羊が食べたいとタクシーの運転手に言ったら、「二十番」という店に案内された。泡盛を飲みながら歯ごたえのある「山羊刺し」を食べると、こたえられぬ。「チーイリチー」というものも頼んでみたが、これは山羊の血を入れてつくる臓物の炒めで、烏賊墨のように真っ黒く、かなり匂いが強い。ゴーダ・チーズのあの匂いである。皿に山盛り出て来たから食べきれなかったが、今に忘れられない。
 翌日、友人を連れてまた行き、今度はフーチバーの入った「山羊汁」を頼んだが、これも良かった。

2013年8月 7日 (水)

「こはる」の艾餃子

 福島市は餃子の町の一つで、生垣の続く静かな細道の奥に「餃子」の看板が出ていたりする。大陸帰りの人が開いたという店もある。「こはる」という店は蝦餃子、カレー餃子などの変わり餃子を出すが、皮に艾(よもぎ)を練り込んだものを水餃子にしてもらったら、あっさりして香り高く、実に良かった。

2013年8月 6日 (火)

K又のおばのオレンジの皮

 親戚のK又のおばは料理が得意で、オレンジの皮の砂糖煮をつくるが、すこぶる美味い。フランス料理屋でも菓子屋でも、これほど美味いものは出さぬ。おばの亡き父親は下戸だったが、上等なブランデーを沢山もらい、棚に何十年もしまってあった。やはり一滴も飲まぬおばは酒の値打ちがわからぬから、そのブランデーを湯水のように使ってオレンジの皮を煮る。蓋し、このような菓子は上戸にはつくれぬ。よって「下戸菜」と名づける。

2013年8月 3日 (土)

微温湯温泉の粽

 微温湯温泉に以前勤めていた手伝いの「ばっちゃん」は粽をよくこしらえた。形は平べったい三角形で、小さい笹の葉二枚でくるみ、畳表に使う藺草で結ぶ。きな粉で食べる。土地では「マキ」というのだとか。

2013年8月 2日 (金)

微温湯温泉の三つ葉

 微温湯温泉は吾妻山の山腹にある一軒宿だ。ここの小さな孫娘は、野生の三つ葉を見つけるのがうまい。
 味噌汁に入れると、えも言われず芳ばしく、ふだん三つ葉と思っているものが嘘のようだ。茶碗蒸しに入れても良い。

2013年8月 1日 (木)

N沢家の河豚鮨

 我が友・N沢君の父君が御健在なりし頃、大原あたりへよく出かけられてショウサイ河豚を釣った。大漁な時は私なども家に呼ばれて、刺身とチリを御馳走になった。ことに美味かったのが、河豚の昆布じめを鮨に握ったもので、鮨の中でも出色と思う。
 父君みまかりし後、食するを得ない。

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