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2013年9月

2013年9月29日 (日)

地獄谷温泉の粽

 渋温泉の近くの地獄谷温泉は一軒宿で、手づくりの粽を名物にしていた。一度、M君と森の中を小一時間も歩いて、食べに行ったことがある。きな粉をつけて食べる普通の粽で、それを食べてから、風呂に入った。内湯の外に露天風呂があり、猿が入りに来ることで知られている。
 向かいの谷間をながめると、猿がたしかに何匹もいた。あれが入りに来るのだろうと思った。
  のちに、台湾のある女優さんにその話をしたら、「猿と一緒に入るなんて、イヤだわ」と言っていた。

2013年9月26日 (木)

上田の塩イカ 

 信州・上田では保存食の塩イカというものを食べる。一番私の印象に残っているのは、「源喜食堂」で出て来たそれである。
 「源喜食堂」は昼酒の飲める居酒屋で、蕎麦屋の「刀屋」がある横丁の駅寄りにあった。年輩の常連客がいつもなごやかに飲んでいた。ある時、つまみに塩イカを頼んだら、出て来たのは大ぶりで、旨味があって、じつに良かった

2013年9月25日 (水)

北京亭の「柚入りラーメン」

 福島市の文化通りにある「北京亭」は、今も営業しているのかどうか知らない。建物はそのまま残っているが、出入りする人はない。私は昔、ここで「柚入りラーメン」を食べたことがある。この店の食べ物には何でも蚊でも柚が入っていた。
 福島は柚の産地の北限だというので、こういう趣向を立てたらしい。

2013年9月24日 (火)

「長春タカ」の肉餅

 福島駅東口、東北電力の向かいの雑居ビルに、以前「長春タカ」という小さな店があった。長春出身の御夫婦がやっていて、肉餅(ロウピン)を目の前でつくって食べさせた。白酒も置いていたので、私には嬉しい店だったが、いつのまにかやめてしまった。

2013年9月23日 (月)

三島大社の塩昆布

 一頃、伊豆の畑毛温泉へよく行ったが、その際、行き帰りに三島の街へ寄って、昼飯を食べたりした。三島大社へお参りすると、境内に屋台が出て、塩昆布を売っている。試しに一つ買ってみたら、すこぶる美味い。
 酒の肴に良く、茶漬けにしても良かった。

2013年9月22日 (日)

「のんきや」のどて焼き

 どて焼きというものを食べてみたいと前々から思っていたが、機会がなかった。この前大阪へ行った時、「じゃんじゃん横丁」の「のんきや」でやっと念願を果たした。
 この店は朝の八時からやっている立ち飲みの酒場で、おでんの鍋の横に浅い平鍋が置いてあり、串に刺した牛の軟骨をそこへ二列に並べて煮込む。思ったよりサッパリした味だった。
 念願を果たしてホッとしたあと、おでんが旨いので酔っ払った。

2013年9月20日 (金)

青森の蜆

 小学校の頃、味噌汁に入っている蜆の身は食べるべきか、捨てるべきか、級友と論じ合ったことがある。東京の蜆は小さいから、かようなスコラ哲学の論題も生まれるが、青森の蜆は大ぶりで、美味で、論争の余地がない。
 蜆ラーメンというものも良い。

2013年9月19日 (木)

「徳萬殿」の味噌餃子

 神保町の「ラドリオ」のそばの裏路に「徳萬殿」という小さな中華屋があった。永昌源の五加皮などを置いてあり、私は時々、ここの名物「味噌餃子」を肴に酒を飲んだ。
 くだんの味噌餃子は水餃子の上から味噌だれをかけたもので、たれはあまり味が濃すぎず、トロリとしている。てっぺんに刻んだ紅生姜がほんの少し、チンマリと載っている。ここの料理は全体に台湾風の味わいがあったが、経営が代わってから、昔とは様変わりしてしまった。

2013年9月17日 (火)

ゴッコ汁

 昔、M円さんとN沢君と北海道へ行った時、小樽で魚屋の店先を見たら、口の大きい、でろりと腹のふくれた、鯰のような鮟鱇のような不器量な魚が並んでいる。腹が割れて、鮮やかな黄色の脂だか卵だかが曝け出されている。煮たらさぞ美味かろうと思ったけれど、旅の空で自炊をすることも出来ぬので、そのまま通り過ぎた。
 私はその魚の名前を間違って「ドンコ」と記憶したが(横にドンコが置いてあったのかもしれない)、地元で「ゴッコ」という魚、ホテイウオであった。食べる機会にずっと恵まれなかったが、ある時、根岸の「中里」へ行くと、この魚の汁があったので喜んで注文した。
 思った通りの美味であった。

2013年9月16日 (月)

 以前、伊豆の畑毛温泉に「駒の湯本家」という旅館があり、私は「大仙家」が昔の経営でなくなってから、ここによく泊まった。
 部屋はたいがい往来に面した角の六畳だった。
 ある朝、食後にぼんやりしていると、窓が開いて、仲居さんが覗き込んだ。
 「これ、食べて」
 といって、紙につつんだ少しばかりの苺を差し出す。
 「死んだ兄さんが、いつもお客さんみたいに机に向かって、勉強ばかりしてたんだ。畑でとってきたから、食べて」という。
 苺は白っぽく、みずみずしかった。

2013年9月12日 (木)

三ノ輪の「肉まん」

 「三ノ輪界隈では、おでんに肉まんを入れるよ」
 わたしは飲み屋でそう聞かされた時、仰天したが、くだんの「肉まん」は包子(パオズ)ではなく、一種のおでん種の通称だった。どんな物か一度食べてみたいと思ったけれど、そのまま忘れてしまった。
  ある年の正月、台湾から知り合いのA氏が来て、三ノ輪で昼酒を飲むことになった。行きつけの店はどこも休みで、写真館の下の「まるたま」という甘味屋に入ったところ、おでんがあったから、「肉まん」を頼んでみた。丸く平べったい練り物で、味は悪くなかった。

2013年9月11日 (水)

歌佐さんのハンバーグ

 四十年ほど前のこと。
 祖母の小唄のお師匠さんの歌佐さんが、縁づいて藤沢かどこかそのあたりへ引っ越した。旦那様は食堂を経営していて、歌佐さんはそこの女将になった。
 小唄仲間のF山さんたちが一度訪ねて行って、帰りに原宿の我が家へ寄った。歌佐さんの店ではカツやハンバーグを出しているというから、
 「美味しかった?」と私が訊いたら、
  「お腹をすかして行きゃあネ」とF山さんはこたえた。
  その後、当の歌佐さんが遊びに来た。業務用のハンバーグとソースを沢山土産にくれて、
  「坊ちゃん、おあがんなさい」
  と例のだみ声でいう。
  冷蔵庫にしまって、あとで食べてみたが、果たしてあまり旨くなかった。

2013年9月10日 (火)

チチモダシ(チタケ)

 福島の飲み屋や宿屋では、地元でチチモダシという焦げ茶色の茸を、茄子などと味噌炒めにする。歯ごたえはボソボソしているが、ダシが出て悪くない。
 山の温泉から町へ下りて居酒屋を梯子すると、お通しで一晩に三度もチチモダシを食べることがある。私はチチモダシの旧知となった。

2013年9月 9日 (月)

マテ貝

 子供の頃、マテ貝を図鑑で見て、面白い貝だと思った。潮干狩りの時に一つ二つ採ったことがあるけれども、あまり食べる機会がない(アゲマキは福建料理などでよく使うが)。
 ある時、根岸の「中里」という居酒屋で品書を見ていたら、マテ貝のバター炒めがあった。常連客が三番瀬で採って来たもので、採るのに塩を二キロ使ったという。少し砂があったけれど、良かった。

2013年9月 7日 (土)

カーエー

 以前、O氏と沖縄の名護へ行った時。ホテルに荷を下ろして、さて晩酌じゃと街へ繰り出し、真っ先に入った飲み屋で、カーエーという魚の塩煮を取った。塩辛いけれど泡盛が進んだ。
 あの魚はあれきり食べていない。

2013年9月 6日 (金)

大磯の蒲鉾

 もう二十数年前になろうか。祖母が大磯のT大病院で療養していた時、駅前の「大内館」という宿屋に何遍か泊まったことがある。平屋建ての古い造りで、大きな提灯がかかっていた。部屋数はさほど多くなく、落ち着いた風情だった。廊下が畳敷きだったのを珍しく思った。
 ここに初めて泊まった晩、夕餉の膳に地元の蒲鉾が出た。色は少し黒ずんでいて、歯ごたえがある。悪くなかった。

2013年9月 5日 (木)

ザザムシ

  昔、高田馬場に「尚武」(ナオタケと読む)という居酒屋があり、早稲田大学の先生などが行きつけにしていた。店は照明が暗く、静かな雰囲気で、奥の柱にかかった般若の面がこちらを睨んでいたのが印象に残っている。
  ここのつまみには虫の類があり、蝗、蜂の子、蚕はもとより、ザザムシの甘煮もあった。疳の虫の薬にする、カワゲラの幼虫である。味はとくに変わった味でもなかった。

2013年9月 4日 (水)

小野鶏屋

 福島の上町、「越後屋」という蕎麦屋の並びに「小野鶏屋」という店があって鶏の丸焼きを売っていた。A井氏と散歩中に見つけ、半羽買って食べてみたが、塩味が程良くて美味だった。

2013年9月 3日 (火)

川越の「発狂くん」

 昔、幻想文学会の会長達と川越の寺を見物に行った帰り、商店街の煎餅屋で見つけて買った。唐辛子をまぶした真っ赤な煎餅であるが、名前ほど辛くはないと思った。

2013年9月 2日 (月)

塩山の煮貝

あたりはずれがある。

2013年9月 1日 (日)

「岩手屋」のむしかぜ

 昔、幻想文学会の会長達と湯島の「岩手屋」へ行ったことがある。「酔仙」だか「七福神」だかを飲んで、随分辛口の酒だと思った。
 その時の品書に「むしかぜ」というものがあった。頼んでみると、雲丹を蒸したのである。そういえば、子供の頃に見た魚介の図鑑にガンガゼというウニが載っていた。カゼとは雲丹のことだと了解した。

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