4 鳥類の部(南蝶食単)

2016年9月15日 (木)

「桃梨郷」の鳩肉団子

 昔、台湾風の甘口湖南料理が東京でも流行ったことがある。懐かしきバブル時代のことだ。
 銀座の「ウエスト」の並びにあったビルの地下の「桃梨郷」はその一つで、メロンをくりぬき、中に鳩肉団子のスープを入れた料理が名物だった。
 鳩肉には小さく刻んだクロクワイが入っていた。

2015年11月16日 (月)

鷭(ばん)

 泉鏡花の短篇小説に片山津だったろうか、北国の温泉で鷭を撃つ人の話が出て来る。  
 この鳥は昔、「楊州飯店」の宴会で出て来たことがある。スープにしたのだが、随分脂がのっていると思った。

2015年3月 6日 (金)

「砂場」の鴨抜き

 今年は正月五日に蕎麦屋の梯子をして酔っ払う。
 二軒目に行った三ノ輪の「砂場」は焼鳥が群を抜いて旨い店だが、冬場に出す合鴨の「鴨抜き」も実に良い。

2014年12月15日 (月)

雉鍋

 昔、渋谷の「花むら」で、大分から雉がとどいたといって鍋にしてくれた。じつに美味い物だと思った。だしが良く出るので、あとでつくった雑炊も美味かった。
 そういえば、信州の上田かどこかでタクシーに乗った時、季節になると、雉の汁で蕎麦を食うのが楽しみだと運転手が言っていた。

2014年7月14日 (月)

フォワグラ(生の)

 昔、ローザンヌのたしか「金の葡萄」という店へ行った時、生のフォワグラとマスカット葡萄のソテーが出て、たいそう美味かった。それが生のフォワグラを食べた最初である。あの店では、魚をパンの皮に包んで蒸焼きにしたものも良かった。

2014年4月10日 (木)

「ひょっとこ食堂」の鴨吸い

 昔、別府の鉄輪温泉の細い横丁を入ったところに、「ひょっとこ食堂」という店があって、老夫婦がやっていた。
 ラーメン屋のような店だが、品書の端に「鴨吸い」というのがあり、これだけ値段が高い。二度目に行った時、頼んでみると、鴨と野菜の入った汁で、錦糸卵がたくさんかかっていた。

2014年4月 7日 (月)

「白糸」の焼鳥

 本郷菊坂の入口に「白糸」という焼鳥屋が、たぶん今でもある。
 大学時代、菊坂に下宿しているY沢という男が「白糸は安い。焼鳥が五十円だ」と言う。
 金欠だった私は、それは本当に安いと思い、行ってみたら、一皿五十円ではなくて一串五十円だったので落胆した。

2014年2月 3日 (月)

雉焼き丼

 昔、泊まりがけで大磯の病院へ祖母の見舞いに行った時、駅のそばの「杉本」で晩飯を食べた。食べる物は雉焼き丼で、日本酒を飲む。祖母の病が案じられて酒は旨くなかったが、飲まないのは宜しくないので、ただ飲んだ。沢山は飲まなかった。

2014年2月 1日 (土)

「浅草バー」のひな皮の辛子和え

 以前、楊州飯店で晩飯を食べると、そのあとたいてい「菊之家」か「浅草バー」に寄った。「浅草バー」は初め、裸電球のぶら下がっている典型的な昔の大衆酒場で、型通りコの字の大きなカウンターがあり、奥に座敷があった。
 大学院の同窓のW君とO君と三人で行った時、両者は初対面だったのに、日活ロマンポルノの話に花を咲かせて、旧知の如くであった。
 この店では「ひな皮の辛子和え」をよくとったが、辛子が利いていて良かった。

2014年1月29日 (水)

フォワグラ

 昔、パリのDさん夫妻が日本へ来た時、お土産にシャンペンと巨大なフォワグラの缶詰をくれた。
 家でそのフォワグラを肴にO君と飲んだが、仲々食べきれない。翌日、足の親指の付け根が痛くなった。あれは通風になりかかっていたに違いない。

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