「フクちゃん」
昔、浅草田原町の仁丹塔のそばに「フクちゃん」という店があって、蝮が売り物だったが、他にも毛虫だの芋虫だの、いわゆるゲテモノを食べさせた。
私はよく小学校の帰りに田原町で銀座線を降りると、その前を通った。飾り窓に置いてある模型の芋虫に甚だ興味をそそられたが、お祖母さんに「イモムシが食べたい」と言っても聞いてくれず、ついに入ることは出来なかった。
昔、浅草田原町の仁丹塔のそばに「フクちゃん」という店があって、蝮が売り物だったが、他にも毛虫だの芋虫だの、いわゆるゲテモノを食べさせた。
私はよく小学校の帰りに田原町で銀座線を降りると、その前を通った。飾り窓に置いてある模型の芋虫に甚だ興味をそそられたが、お祖母さんに「イモムシが食べたい」と言っても聞いてくれず、ついに入ることは出来なかった。
一度、A井氏に誘われ、氏の運転するベンツで岡山の郷六温泉へ行ったことがある。
ここは湯原のそばの一軒宿で、岩の間から私好みのぬるい、綺麗なお湯が滾々と湧く。
その日、客は他におらず、私達は四時頃から、炬燵で酒を飲みながら鼈料理を楽しんだ。最初に血や内臓が出て、鍋の方は、あれは何だったか忘れたが、香りの高い青菜が入っていて、じつに良かった。
蝮を初めて食べたのは、新潟の月湯女温泉でだった。幻想文学会の会長に率いられ、わざわざそのためにローカル線やバスを乗り継いで行ったのである。
食堂は広い三和土に続く座敷で、蝮を頼むと、亭主が生きたのを籠から出して見せてくれた。丸焼きにしてくれたが、味は甚だ良いけれど、どうにも硬くて骨ばかりだと思った
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