ガマズミの実
子供の頃、ドイツかオランダに行った時、ある日、食卓に目の覚めるような朱色の実が出た。小粒で、イクラのようである。砂糖をかけて食べたが、ベタベタしていて酸っぱく、えぐみがあり、舌がヒリヒリするようだった。
その話を人にすると、ガマズミの実ではないかと言われたが、どうか知らない。
子供の頃、ドイツかオランダに行った時、ある日、食卓に目の覚めるような朱色の実が出た。小粒で、イクラのようである。砂糖をかけて食べたが、ベタベタしていて酸っぱく、えぐみがあり、舌がヒリヒリするようだった。
その話を人にすると、ガマズミの実ではないかと言われたが、どうか知らない。
高校の修学旅行で九州へ行った時、あちこちで見るザボンという物を食べたくなった。
長崎生まれのM藤という級友が言うには、
「あれは皮も食える。砂糖漬けにして食べると、腹をこわすは必定」
青島に泊まった晩、町へ出て買って来た。旅館の部屋で食べてみたが、酸っぱいばかりだと思った。
昔、鉄道の旅には、齧ると歯にキーンとしみるような冷凍蜜柑がつきものだった。缶詰の蜜柑のような味で、赤いビニールの網に三個ずつ入っている。
房州へ行く時、よく両国駅で買ったものだ。
私は栗を茹でて包丁で二つに切り、匙で中身をこそぐって食べるのが好きだ。
祖母が死んでから長いこと食べなかったが、この九月に瀬見温泉で山栗を茹でたのにありついた。大きくて立派な栗だった。
昔、甘木先生と蘇州の町を歩いていたら、果物屋の前で先生が
「おう、ちょっと待て」
と私を呼び留める。
「山栗を売ってるから、買ってくれ」
その栗は小さくて硬かった。
親戚のT石のおじさんは会津の人で、房州人である祖母の姪と結婚した。
「枇杷(びわ)の生るところの女を嫁にもらいたかった」
と言ったそうである。
枇杷は果物屋で売る大きな物も良いが、庭木に生る小さい枇杷も甘くて、甚だ佳い。そういうのを伊東の「山喜旅館」や「中里」で食べた。
渋柿を焼酎に漬けると、甘くなるから不思議である。
以前、田中温泉に滞在した時、もらって食べた。
昔、道玄坂の「雪国」では、夏になると青梅を蜜でじっくり煮たのを冷やして、出した。酒の前にも良く後にも良かった。
昔、M君とO君と浅草で飲んだあとに、千束通りの果物屋で砂糖黍を買った。食べ方を知らないので、黒っぽい皮のついたままバリバリと齧り、クシャクシャと噛みくだいて、汁を吸って、ペッと捨てた。
次の日、気がつくと口の中が傷だらけになっていた。
庄内柿は有名だが、最上でも長沢という村の柿が知られている。長沢は瀬見よりも小国川をやや下ったところにある。一度、宿屋の梁を見に行く途中車で通ったが、たしかに柿の木が多かった。
千葉のT石のおじさんはハイカラな物が何でも好きで、電化製品などは真っ先に買った。
ジューサーというものが発売された時も、すぐに買って、健康に良いジュースが飲めると祖母に推奨した。そこでわが家でもジューサーを買ったが、あまり使わないうちに壊れてしまった。
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